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不動産を相続したときは各種費用・税金の支払いに注意!

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相続財産のうち大きな価額割合を占めるのが不動産です。土地や家屋などは、他の財産と比べても規模が大きくなる傾向にあります。

つまり相続人としては大きな財産を得ることができることになるのですが、不動産の相続には様々な費目の支出が伴うということに注意が必要です。

以下でその種類や内容を挙げていきますので、遺産分割にあたり当記事の内容も参考にしていただければと思います。

 

不動産登記にかかる登録免許税

不動産を取得し、その物件の名義人となる方は登記をしなければなりません。

亡くなった方の名義のまま放置することなく相続登記の手続きを進めましょう。

 

そしてこの登記を行う際には「登録免許税」が発生します。

 

納めるべき登録免許税の額は、不動産の評価額から導かれる「課税価格」に「登録免許税率」を掛けて算出されます。

相続登記の登録免許税率は0.4%ですので、1億円の課税価格であれば40万円が登録免許税額ということになります。

 

相続財産としてかかる相続税

登録免許税は登記する場面で負担するものですが、相続一般に関して「相続税」も発生します。

ただ、相続税は登録免許税と異なり、大きな金額で設定されている基礎控除額を超えなければ納税および申告の義務は生じません。この基礎控除額は3,000万円を基準に、法定相続人1人あたり600万円を加算して算出されます。

つまり法定相続人が3人いる場合には基礎控除額は4,800万円になります。

 

そのため実際のところ相続税を納めている人の割合はそれほど大きくありませんが、不動産相続が発生する場合には比較的基礎控除額を超えやすいと言えるでしょう。

国税庁が毎年公表している相続税に関するデータ(https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2021/sozoku_shinkoku/pdf/sozoku_shinkoku.pdf)でも、課税価格の多くを占めているのは土地や建物であることが示されています。

小規模宅地等の特例により軽減も可能

宅地等を相続したとき、「小規模宅地等の特例(相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例)」を利用して税額負担を軽減できるケースがあります。

 

「被相続人の事業や居住用として使用されていたこと」「被相続人の親族が取得すること」といったいくつかの条件を満たすことで、一定面積分にかかる評価額を大幅に下げることができるのです。

そのため不動産相続により相続税が発生する場合には、当該特例の適用可否について検討することが重要です。

 

不動産の譲渡所得にかかる所得税

不動産を管理し、適切に運用していくのは難易度が高いです。

自宅としてそのまま使い続けるのであれば特に考慮する必要はありませんが、場合によっては売却を検討されることもあるでしょう。

 

この場合、不動産の譲渡で得た所得に税金がかかるということを忘れてはいけません。

このときの所得を「譲渡所得」と言います。相続で得た不動産に限らず、土地や建物、株式などの資産を譲渡する場合に発生する所得です。

 

不動産を売却した場合、所得税や住民税として納税することになるのですが、納めるべき税額を計算するためには以下の計算式を用いて「課税譲渡所得金額」を算出する必要があります。

 

課税譲渡所得金額 = 収入金額 ― (取得費 + 譲渡費用) - 特別控除額

 

売却するときの金額が大きいほど課税譲渡所得金額も大きくなりますが、譲渡に要した費用、および「取得費」が大きくなるとその分課税される金額が小さくなります。

 

取得費には、土地や建物の購入価格(建物については減価償却控除後の価格)、購入手数料のほか、例えば以下のような費用が含まれます。

ただし、事業所得などの経費に算入したものは対象となりません。

 

  1. 設備費
  2. 改良費
  3. 不動産を相続したときに納めた登録免許税
  4. 借主がいる不動産であって、当該借主を立ち退かせるために要した立退料
  5. 土地の埋立てや土盛りなどで要した造成費用
  6. 土地の測量費
  7. 所有権確保のために要した訴訟費用
    ※ただし、相続財産である土地を遺産分割するのに要した訴訟費用等は取得費に含めない

 

こうして課税譲渡所得金額が計算されますが、この金額を給与所得などとまとめて所得税の計算をするのではありません。一般的な所得とは区別・分離して計算するという分離課税制度が採られています。

そこで譲渡所得にかかる税額は、課税譲渡所得金額に一定の税率をかけて算出します。

 

なお、その税率は当該物件の所有期間に応じて異なります。

譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えるのであれば、「長期譲渡所得」として15%※(住民税は5%)の税率が適用されます。

逆に、この期間を超えないのであれば「短期譲渡所得」として30%※(住民税は9%)の税率が適用されます。

※このほか2037年まで復興所得税が所得税の2.1%発生します。

 

不動産の保有にかかる固定資産税

不動産の相続後、売却することなくそのまま保有し続ける場合には上記所得税はかかりません。

しかしながら「固定資産税」を維持費の一つとして払い続けなければなりません。

 

固定資産税とは、「固定資産の保有と行政サービスとの間に介在する受益関係に基づいて課税される財産税」と表現されることもあります。固定資産とは土地や家屋、償却資産のことであり、その資産価値に応じた課税がなされます。

以下の計算式を用いて納税額が算出されます。

 

固定資産税額 = 課税標準額 × 1.4%(標準税率※)

 

※自治体によって異なります

なお、課税標準額には固定資産の評価額がそのまま代入されるわけではありません。政策的な特例措置などを考慮した上で計算されます。

そしてその額に、標準税率として1.4%が掛けられ、所有者が負担すべき金額が計算されます。

都市計画税が課されるケースもある

物件のエリアによっては「都市計画税」が課されることもあります。

 

都市計画税とは、都市計画法に基づいて設定される「市街化区域内」にある土地や建物に課される税のことです。

そして市街化区域とは、同法上の「市街地」、および「おおむね10年以内に市街化を図るべき区域」のことです。

この市街化区域に該当している場合、所有者には固定資産税の納付通知書と一緒に都市計画税の納付通知書も送られてきます。

なお、都市計画税の税率は0.3%を上限として各自治体が決定します。