相続税申告の必要性を判断する方法・基準について
相続があったとしても常に相続税の申告が必要になるわけではありません。
割合だけを見れば申告および納税の必要がない場合がほとんどです。しかしどんな方でも相続財産の調査を行い、その要否を検討することは必要です。
そこでこの記事では、相続税申告の必要性を判断するための方法、どのくらいの遺産があれば申告が必要になるのかという基準について解説していきます。
手順①基礎控除額を算出
まずは判断基準となる基礎控除額を算出しましょう。 正しくは「遺産に係る基礎控除」の金額のことです。
この控除は常に適用されるものであり、遺産総額がこの額を超えなければ納税はゼロとなりますので、申告要否に関する最初の判断基準になります。
そして肝心の控除額ですが、これは法定相続人の数によって決まります。
基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
という計算式で算出されますので、仮に法定相続人が2人であれば基礎控除額は4,200万円となります。
また、以下の点に注意して法定相続人の数をカウントしていきましょう。
- 相続放棄をした者がいる場合は、放棄がなかったものとしてカウントすること
- 養子は、実子がいるときは1人まで、実子がいないときは2人までがカウントできる上限となること
- 胎児は含めないが、相続開始時点で生まれていなくても申告の日までに生まれたのならカウントできる
手順②相続税の対象になる財産の合計額を算出
次に、相続税の課税対象となる遺産総額を調べていきましょう。 例えば相続税の対象となる主な財産として「現金」や「預貯金」、「有価証券」、そして「不動産」が挙げられます。
特に注意すべきは不動産です。 価額が非常に大きく、不動産の有無やその評価額が相続税申告要否に大きな影響を与えるからです。
国税庁が公表している統計データでも、課税されている相続財産のうちもっとも大きな割合を占めているのは「土地」であることが示されています。
土地にしても建物にしても、現金などのように財産そのものを見て価額がすぐに判別できません。そこで、適切な評価方法を選択し、その価額を算出していかなくてはなりません。 例えば土地なら、①路線価方式や、②倍率方式と呼ばれる評価方法があります。
- 路線価方式(路線価×面積で評価)
- 倍率方式(固定資産税評価額×倍率で評価)
注意すべき財産
基本的には上で挙げた不動産や現金・預貯金、有価証券を調べることでおおまかな遺産総額は把握できるでしょう。
しかし人によっては高級な自動車を保有していることも、高級な腕時計を保有していることもあります。そのため自宅や貸金庫などをくまなく調査し、隠れた財産がないかチェックしていくことが大切です。
また、以下の財産も相続税の対象となりますので要注意です。
- 被相続人の名義ではないが、被相続人の管理下にあった財産 例)被相続人が孫のために口座を開設し、財産を入れていたが、被相続人が管理をし続けていたケース
- 相続人が受け取った生命保険金や死亡保険金、死亡退職金 一定額を超えて受け取った分は相続税の計算に含める ※「一定額」=500万円×法定相続人の数
- 被相続人から受け取った生前贈与
- パターン1:相続時精算課税制度の適用を受けた贈与 「相続時精算課税制度」とは、この制度を使用して贈与をした財産は相続税の計算に含め、納税した贈与税をその後の相続税納税時に精算する制度のこと 納めた贈与税は相続税額から差し引かれ、相続税額の方が小さな場合には差額が還付される
- パターン2:相続時精算課税制度の適用はないが、相続開始前3年以内の贈与 相続人や相続・遺贈により財産を取得した者に対する相続開始前3年以内の贈与は、相続税の計算に含める(生前贈与加算)
- 貸付金や未収金などの債権
手順③債務や葬式費用を算出
相続税の計算では、マイナスの財産についても考慮する必要があります。 例えば、被相続人の借金が残っている場合や何らかの未払い金が残っているケースが考えられます。これら「債務」についても相続の対象となりますので、税額の計算にも含むこととされています。当然、債務額が大きいほど納税すべき額は小さくなります。
債務同様に扱われるのが「葬式費用」です。 例えば以下のような費用は葬式費用として含みます。
- 火葬、埋葬、納骨でかかった費用
- 本葬式、仮葬式、お通夜でかかった費用
- 遺体の回送、遺骨の回送でかかった費用
- 読経料等へのお礼として支払った費用
- 遺体の捜索にかかった費用
このように遺体の運搬やお通夜などに要した費用を含めることができる一方で、「香典返し」「法事」「墓地や墓石の購入」などに要した費用は含めることができませんので注意しましょう。
手順④相続財産の合計額と基礎控除額を比較
以上の手順①②③を経てそれぞれの計算ができたなら、基礎控除額(①)と相続財産の価額(②-③)のバランスを見ましょう。
「②-③」の計算をした時点でプラスにならなければ相続税の申告は必要なくなります。差し引きプラスになったとしても、その額が基礎控除額(①)を超えなければやはり申告は必要ないということになります。
なお、基礎控除額を超えたとしても、常にすべての相続人が相続税の納税が必要になるとは限りません。ここで説明したのは最初の関門であり、さらにいろいろな制度を考慮して判断していかなくてはなりません。 例えば配偶者の税額軽減や未成年者控除、障害者控除など各人適用し得る控除があり複雑な仕組みとなっています。 計算に不安がある場合は、一度税理士に計算を依頼することをおすすめします。
資格者紹介Staff
税理士古野孝行
一般家庭から億を超える相続まで、広く対応が可能です。複雑な相続や、難しい土地の評価なども、安心してお任せください。
当事務所の税理士は、独立前から一貫して相続案件に注力しており、一般家庭から20億円規模の相続まで、累計で120件超の対応実績があります。専門性の高さと土地の評価には特に自信があり、その実力は他の専門家から相談を受けるほどです。若手税理士ですので、相続対策や相続発生時のみならず、その次の代までサポートできるのも強みの一つです。お困りの際はお気軽にご相談ください。
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