相続税の課税対象となる財産とは? 遺贈や生命保険、生前贈与で取得する財産の課税について
相続開始をきっかけに、被相続人に関わる多様な財産の所有者が変わります。
そして相続等により取得した財産には相続税が課税され、基本的には多くの財産を取得するほど多くの相続税が課税されます。
ただ、あらゆる財産が課税されるわけではありませんので、相続税の計算をする際には厳密に課税・非課税の区分ができていなければなりません。
そこで当記事では「相続税の課税対象となる財産」「相続税の課税対象外の財産」の2つについて、紹介していきます。
相続税の課税対象になる財産
まずは相続税の課税対象となる財産を整理していきます。
相続や遺贈により取得した財産はもちろん、特別寄与料として取得した金銭、相続人等に固有の財産であっても課税対象になるものがあります。
相続により取得した財産
相続により取得した財産は、一部を除いてほとんどが相続税の課税対象となります。
現金、預貯金、建物、土地、有価証券など広く計算に含めなくてはなりません。
現金に関しては、被相続人の自宅をよく調べ、「タンス預金」「へそくり」などと呼ばれる現金についても隠されていないか調査しましょう。
建物には、被相続人が自宅として使っていた「居宅」以外に、「店舗」「事務所」「倉庫」「共同住宅」なども該当します。
建物の区分、使用状況によっても評価額は異なりますので要注意です。
土地は金額ベースで考えたとき、遺産のうちもっとも大きな割合を占めている財産です。こちらも「宅地」のほか、「田」「畑」「山林」「牧場」、そして「雑種地」などの区分があります。駐車場や空き地なども雑種地として課税対象になります。
有価証券には、「貨幣証券(受取手形や小切手)」、「株式」「社債」「国債」などがあります。
近年は紙ベースではなくネット証券も増えているため、遺産調査はオンライン上でも行うことが重要です。
遺贈により取得した財産
遺言書により被相続人の指定を受けて財産を譲り受けることもできます。これは「遺贈」と呼ばれます。
遺贈により相続人以外の人物でも遺産を受け取ることができるのですが、相続税の課税についても忘れてはいけません。
遺贈を受けるときも、相続で預貯金や不動産などを取得したときと同じように課税されます。
また、被相続人の配偶者や子ども、両親以外の人物が遺産を取得した場合、相続税の計算において2割加算することが法定されています。
遺贈により被相続人の兄弟姉妹や孫、甥・姪、友人などが財産を取得するときは、相続税の負担が割増になることは知っておきましょう。
みなし相続財産
相続税法では、民法上の定められている純粋な相続財産以外にも課税対象を広げています。その代表例が「みなし相続財産」です。
純粋な相続財産とは言えないものの、相続税の計算上は相続財産とみなされる財産があるのです。
1つは生命保険金です。被相続人が保険料の負担をしているなどの要件を満たしているとき、一定額を超えた保険金が課税対象になります。
死亡退職金も同様にみなし相続財産です。
その他、次の権利についてもみなし相続財産として課税対象になります。
- 「生命保険契約に関する権利」
保険料の負担者が被相続人、契約者が被相続人以外の人物となっている生命保険契約であって、相続開始時点で保険金の支払事由が生じていないもの
- 「定期金に関する権利」
掛け金や保険料の負担者が被相続人となっている定期金についての権利
相続開始前3年以内の贈与で取得した財産
贈与は生前に行う行為です。当事者双方の意思表示により契約を締結する必要がありますので、相続が始まってから贈与契約を交わし、これを実行することはできません。
そこで贈与に対しては相続税ではなく贈与税の課税により処理するのが原則です。しかしながら、相続開始直前に行われた贈与に限り、相続税の計算に含めるとのルールが法定されています。 暦年課税制度に基づいて贈与をすれば年間110万円まで非課税で贈与できるのですが、「相続開始前3年以内に行われた贈与は、相続税の計算に含める」というルールがあることにより、節税効果が得られなくなるケースがあることは知っておきましょう。
相続時精算課税の適用を受ける財産
贈与税の課税は、暦年課税制度に基づくのが基本です。しかし、手続を行うことで「相続時精算課税制度」に基づいて課税することもできます。
同制度では、贈与時の税負担を軽減し、その恩恵分を相続時に精算することでバランスを取っています。
そこで、相続税の計算をする際、遺産の総額に相続時精算課税制度に基づいて贈与した財産の価額も加えることとなります。
特別寄与料として取得した金銭
相続制度には「寄与分」という概念があります。相続人が被相続人に対して療養看護をしていたなどの事情があり、被相続人の財産に寄与していたとき、その人物の相続分を加算することがあります。その加算分が寄与分です。相続分の加算ですので、相続人が相続により取得した財産同様に課税されます。
寄与分は相続人に限って適用できるものですが、近年の法改正により、相続人以外でも要件を満たせば「特別寄与料」を受け取ることが可能です。
特別寄与料については被相続人から遺贈されたものとみなされますので、こちらもやはり相続税の課税対象です。
また、上述の2割加算のルールが適用される点にも留意しましょう。
相続税の課税対象外の財産
相続を契機に取得する財産であっても、相続税が課税されないものがあります。課税対象ではない財産の例を以下に示します。
みなし相続財産の一定額
みなし相続財産は、一定額を超えた分が課税されます。例えば生命保険金、死亡退職金については、「500万円×法定相続人」がこの一定額です。
つまり、法定相続人が3人いるときは、生命保険金などを1,500万円受け取っても、まるまる課税対象外となるのです。
墓地や墓石など
取得する財産の内容が「墓地」「墓石」「仏壇」「仏具」などであるときは、課税対象外となります。
ただし、骨董品としての価値があるもの、投資対象になるもの、商品として所有しているものに関しては相続税が課税されます。
一身専属権
被相続人の財産の中には、そもそも相続人に承継されないものもあります。取得できないものに関しては、当然、相続税も課税されません。
被相続人の「一身に専属するもの」がその代表格です。
一身に専属するものにもいろいろあります。例えば「代理権」については、代理権が消滅する事由の1つとして「本人の死亡」が民法上掲げられています。使用貸借契約における借主としての地位も同様です。民法で「使用貸借は借主の死亡により終了する」と明文規定が置かれています。
組合員としての地位も同じです。
借金の契約に基づいて被相続人が債務者になっている場合、その債務も承継することになりますが、ここに挙げた契約上の地位は相続人に影響しません。
また、明文規定はないものの、扶養請求権や財産分与請求権、生活保護の制度に基づく受給権なども被相続人の一身に専属するものとして相続の対象から外れ、同時に課税されることがありません。 ※扶養料や財産分与に関して一定額の給付請求権が生じている場合は別
債務
相続税は、取得した財産の価値に対応して金額が定まります。
そしてマイナスの価値を持つものを取得したときは、プラスの財産からその分を控除します。
よって、被相続人が残した未払いの料金、借入金などの債務を取得したのであれば、その債務額は遺産の総額から差し引くことになります。
当然、相続税の課税対象にはなりません。
控除ができるものとしては、葬式費用も挙げられます。葬式費用は債務とは別物ですが、相続税の計算上、同じように遺産総額から差し引くことができます。そこで、葬式や火葬、埋葬、納骨、遺体の回送、読経料などのお礼、死体の捜索にかかる費用を支出するほど、課税対象となる価額は小さくなります。 なお、香典返しや墓石・墓地の買い入れ、法事などに要する費用は控除することができません。
詳しくは税理士に相談して、課税対象となる遺産の価額を算出してもらうと良いでしょう。
資格者紹介Staff
税理士古野孝行
一般家庭から億を超える相続まで、広く対応が可能です。複雑な相続や、難しい土地の評価なども、安心してお任せください。
当事務所の税理士は、独立前から一貫して相続案件に注力しており、一般家庭から20億円規模の相続まで、累計で120件超の対応実績があります。専門性の高さと土地の評価には特に自信があり、その実力は他の専門家から相談を受けるほどです。若手税理士ですので、相続対策や相続発生時のみならず、その次の代までサポートできるのも強みの一つです。お困りの際はお気軽にご相談ください。
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