【相続税の申告】 相続税の計算に含める基本的な財産と注意すべき財産について
相続財産を受け取ったとき、その財産の価額が基礎控除額を超えるのであれば相続税の申告が必要になります。
その判断をするためには、どの財産が相続税の計算に含まれるのかを整理できなければなりません。
ここで相続税課税の観点から注意すべき財産を挙げていきますので、該当する財産を取得した方は注意して相続税の計算をするようにしましょう。
相続・遺贈で取得した純粋な相続財産
亡くなった方の財産を相続した場合、その財産は相続税の計算に含め、申告対象となるのが原則です。
遺言を原因として受けた遺贈であっても同様ですし、死因贈与(亡くなったら贈与をするという契約)により受けとった財産に関しても同じです。
例えば現金や預貯金、株式、国債、土地、建物、自動車、宝石、腕時計、その他様々な財産が相続税計算の対象になります。
国外にある財産についても、原則として相続税の対象となりますし、権利についても、著作権のように金銭に見積もることができる経済的価値を持つものであればすべて相続税の計算に含めます。
みなし相続財産等の注意すべきもの
以上は亡くなった方が生前有していた財産ですので、純粋な相続財産ということができます。
これに対し、亡くなった方が有していたわけではないものの相続税の計算に含めるとされる財産があります。
死亡退職金・死亡保険金
被相続人が生命保険の保険料を負担しており、被相続人の死亡により生命保険金を取得したときには、生命保険金も相続税の課税対象となります。
生命保険金そのものは被相続人が所有していたものではありませんが、被相続人が支払っていた保険料は被相続人の財産から支出されたものです。
そのため完全なイコールの関係にはないものの、保険金は保険料として納めた金銭が変化したものであるとも考えられます。
そのため税制上はこれを相続財産とみなして取り扱うことが規定されています。 ただし相続人が受け取った保険金は「500万円×法定相続人の数」の限度で非課税枠が設けられていますので、法定相続人を仮に3人と想定すれば、1,500万円までは相続税を気にせず受け取ることが可能となります。
死亡退職金についても生命保険金と同様に取り扱われます。 本来被相続人に支給されるはずであった退職手当金等を受領する場合、死亡から3年以内に支給が確定した分については相続財産とみなされます。非課税枠も同様に設けられており、上限額は同じ計算により算出できます。
なお、被相続人以外が契約者及び被保険者で被相続人が保険料を負担していた生命保険契約についても、相続時の解約返戻金の金額を契約者が相続等により取得したものとみなされて相続税の対象となります。 こちらも漏れやすいので注意が必要です。
教育資金や結婚・子育て資金に関する管理残額
教育資金の一括贈与、結婚や子育てに関する資金の一括贈与については、贈与税非課税の適用を受けられるケースがあります。
しかしその契約期間の間に贈与者が亡くなった場合、非課税の拠出額から教育資金の支出額(細かな計算は省略しております)を控除して残った額については、贈与者から相続等により取得したものとして相続税の計算に含めなくてはなりません。
相続開始前3年以内に受けた贈与
相続税対策として一般的な手法が、生前贈与です。 年間110万円を超える分についてはその他特例等の適用を受けなければ贈与税が課税(暦年課税)されますが、その範囲内であれば非課税で財産を贈与することができます。
しかし相続等で財産を取得した方が受けた相続開始前3年以内の贈与に関しては相続税の計算に含める必要があります。
相続開始を予期して急いで生前贈与をしても節税効果が得られない可能性があることは知っておかなければなりません。
相続時精算課税の適用を受けて取得した贈与財産
贈与税の課税方法として、暦年課税のほか、「相続時精算課税」もあります。 相続時精算課税は、親子間などで行われる贈与で選択的に利用できる制度であり、“贈与時には特別控除額および一定の税率にて贈与税を計算し、相続開始後に相続税で精算をする”という仕組みになっています。
上手く活用することで節税効果等が狙える場合もありますが、相続時に精算を要しますので、相続税の計算には含めなおす必要があります。
なお、同制度利用にあたっては贈与税の申告期間内に「相続時精算課税選択届出書」を税務署に提出する必要もあります。
特別寄与料として確定した分
相続人でも受遺者でもない立場の人が、遺産から一定の財産を取得するケースがあります。 生前、被相続人の介護をしていたなど、特別の寄与をしていた方は「特別寄与者」として「特別寄与料」を受け取ることが可能です。 ただ、この特別寄与料についても確定した額は相続税の課税対象となります。「3,000万円+600万円×法定相続人の数」の計算式で算出される基礎控除額を超える場合のみ問題となりますが、納税が必要となる場合、特別寄与者はほとんどの場合、税額を2割加算して納税する必要があります。 なお、特別寄与料は特別寄与者からの請求に応じて相続人が支払うことになり、相続人側はその分を差し引いて相続税の計算をすることができます。すでに相続税の申告をしてしまっている場合でも、“特別寄与料の額が定まったことを知った日の翌日から4ヶ月以内”であれば更正の請求により還付を受けることができると定められています。
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税理士古野孝行
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