株式の贈与税|株式の評価方法と贈与税額の計算方法
財産の所有者が移るとき、その原因に応じて税金が課税されます。例えば株式を持つ方がこれを他人に無償であげるときにも課税は起こります。
無償であげる行為に伴って課税されるのは「贈与税」で、一定の計算式に基づいて計算することができますが、そのためには贈与対象となる財産の評価額を調べる必要があります。
そこで当記事では「株式を贈与する場合」について言及し、その評価方法や贈与税額の計算方法を解説していきます。
株式の贈与にかかる贈与税の計算方法
まずは贈与税の基本的な計算方法を紹介します。以下の計算方法は贈与するのが株式であっても現金であっても同じです。
贈与税額 = (1年間で贈与された財産の価額の合計額-110万円)×税率-控除額
つまり贈与された財産の価額が年間を通して基礎控除額である110万円以下であれば、非課税となります。
しかし基礎控除額を上回る贈与がなされたときは、課税価格の大きさに対応する税率を乗じた税額を負担しないといけません。
課税価格が大きくなるほど税率も大きくなる仕組みになっており、具体的な値を知るには①特例税率と②一般税率のどちらが適用されるのかを知る必要があります。
特例税率 | 次の2点を満たすときの税率。一般税率より税負担が小さくなるように税率と控除が定められている。 ・贈与を受けた方が18歳以上(その年の1月1日時点での年齢) ・父や母、祖父母など(直系尊属)から贈与を受けている |
---|---|
一般税率 | 特例税率が適用されないときの税率。 |
各税率については下表の通りです。法改正により将来的に変動する可能性があることにも留意しましょう。
基礎控除後の課税価格 | 特例税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | ― |
400万円以下 | 15% | 10万円 |
600万円以下 | 20% | 30万円 |
1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
4,500万円を超える | 55% | 640万円 |
基礎控除後の課税価格 | 一般税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | ― |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
3,000万円を超える | 55% | 400万円 |
出典:国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」
贈与税の計算例
以上を踏まえて、贈与税の計算例をいくつか示します。
例1)祖父が20歳の孫に対して株式2,000万円相当を贈与した。
贈与税額 = (2,000万円-110万円)×45%-265万円
= 585.5万円
※特例税率適用
例2)夫が妻に株式2,000万円相当を贈与した。
贈与税額 = (2,000万円-110万円)×50%-250万円
= 695万円 ※一般税率適用
例3)母親が息子に100万円相当の株式を贈与した。
基礎控除額以下の贈与額であるため課税価格が0円となり非課税。
株式の評価額を知る必要がある
基本的な贈与税の計算方法を説明しましたが、具体的な税額が算出できるのは贈与された財産の評価額が明らかになってからです。
株式の贈与であれば、その株式が「贈与税の計算上何円で評価されるのか」を知らないと計算できません。
株式の評価方法
贈与を受けた日における株式の価値を調べ「〇〇円」だとはっきりさせましょう。評価方法は「上場株式」と「非上場株式」で異なります。
なお、上場株式とは金融商品取引所に上場されて市場で取引されている株式、非上場株式とはそれ以外の株式を指します。
上場株式の場合
上場株式の評価額を把握するのはそれほど難しい作業ではありません。
市場で取引価格がついていますので、贈与がなされた日における価格を調べれば良いのです。株式の銘柄で検索にかけて平均株価を探しましょう。
平均株価がわかればそこに株式数を乗じて、贈与税の計算に含めるべき金額が明らかになります。
平均株価1万円の銘柄を1,000株受け取ったのなら、1,000万円の贈与を受けたといえます。
非上場株式の場合
非上場株式の評価額を調べるのは難易度が高いです。「原則的評価方式」と「配当還元方式」の評価方式に分かれ、原則的評価方式の場合にはさらに①類似業種比準方式と②純資産価額方式に基づく計算をしていかなくてはなりません。
投資用としての株式であって株式会社の経営に関与しないような場合には、配当還元方式による評価が可能です。
このときは次の配当金や会社の資本金が評価額を左右します。
配当還元方式に基づく評価額 = (1株あたりの年配当金額÷10%)×(1株あたりの資本金額÷50円)
一方で経営者が後継者に引き継ぎをするような場面では、贈与対象の株式が占める議決権割合は大きくなります。
また、受贈者が役員になることが予想されます。このときは原則的評価方式を採用して評価します。
会社規模に応じて上の①と②のいずれか、またはその両方を用いて評価額を明らかにします。
なお、①は類似する上場会社の株価を参考にする評価方式で、②は会社の資産等から株価を評価する方式です。
複雑な計算を要しますので、税理士に相談して対応してもらうことが推奨されます。
対価のやり取りのある「株式譲渡」と「株式贈与」は異なる
当記事で説明した贈与税は、財産を「贈与」したときの課税方式です。つまり無償で他人に株式等の財産与える行為が対象です。
一方で株式等の財産を、対価と引き換えに他人に与える場合は贈与といいません。この行為は、「株式贈与」と区別して「株式譲渡」と呼ばれます。
対価を得た方に、対価の大きさに応じた所得税が課税されます。ただし必要経費として発生する取得費用や取引手数料などは差し引くことができます。
贈与の場合とは計算方法が異なりますし、納税義務者が贈与を受けた側にある点でも異なっています。
資格者紹介Staff
税理士古野孝行
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