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相続税申告における不動産評価とは? 評価の必要性と評価の方法について - 古野孝行税理士事務所

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相続や遺贈により取得した財産がある場合、その価額に応じて相続税が課税されます。

仮にすべての相続財産が現金である場合、「〇〇万円」といった取得額を容易に判断できます。
しかし取得したのが物である場合はどうでしょうか。

例えば家屋や土地を相続することがありますが、現物を見ただけで価額はわかりません。
そこで“不動産の評価”が必要です。
不動産の価額が相続税申告にどう影響するのか、またどのように不動産を評価するのか、といった内容について当記事で説明していきます。

 

不動産評価とは

「不動産評価」とは、不動産の価値について評価し、「〇〇万円」などと価額を付けることを意味します。

不動産売買など、取引に際して評価が必要になることもあれば、相続税の計算をする上で不動産評価が必要になることもあります。

相続税申告における不動産評価の必要性

相続税に関しては、3,000万円以上という大きな基礎控除額を差し引くことが可能で、遺産の価額が基礎控除額以下であれば相続税の納付は必要ありません。
このときは、基本的に相続税の申告作業自体も行う必要がなくなります。

そこで「相続税申告が必要であるかどうか」を判断するためにはまず、遺産の価額を把握しないといけません。

遺産を構成する一要素である不動産の評価ももちろん欠かせません。他の財産も不動産同様に評価を行うことが求められますが、家財のような動産一般に比べて不動産は桁違いに価額が大きいケースが多いです。

物件1つの評価額が加わるだけで相続税申告の必要性、相続税額が大きく変わることもあります。
その意味では、相続税申告において、不動産評価は特に重要な作業であるといえます。

 

不動産の評価額と相続税の関係

不動産の評価額が、相続税の額にどう関係してくるのか、以下で簡単に示します。

相続税の基本的な計算方法

相続税の計算は、次の手順に沿って進められます。

①遺産の評価を行う

②財産から債務や非課税財産、葬式費用などを控除する

③②に相続開始前3年以内※1になされた贈与の額、相続時精算課税※2による贈与の額を加える

※1 7年以内に改正(経過措置あり)※2税制改正注意

④③から基礎控除を控除して「課税遺産総額」を算出する

⑤課税遺産総額を法定相続分に応じて分割。各法定相続人の取得金額に対応する税率と控除を適用後、法定相続人ごとの税額を合計して「相続税の総額」を算出する

⑥相続税の総額を、実際の取得割合に応じて分割。各人条件を満たす税額控除を適用して、「相続人ごとの納付すべき相続税額」を算出する

不動産の評価は、上の手順で示した①で必要となる作業です。

取得金額が大きいほど税率も大きくなる

遺産の価額が大きいほど、適用される相続税の税率は高くなります。不動産1件で数千万円以上の価額が加算される可能性もありますので、不動産が遺産に含まれているときは高い税率が適用される可能性があります。

なお、税率は各人の実際の取得分に適用するわけではありません。前項の⑥で示した通り、各人の法定相続分に応じて判断します。

法定相続分に対応する金額 税率 控除額
~1,000万円 10%
~3,000万円 15% 50万円
~5,000万円 20% 200万円
~1億円 30% 700万円
~2億円 40% 1,700万円
~3億円 45% 2,700万円
~6億円 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

参照:国税庁「No.4155 相続税の税率」

 

不動産の評価方法

相続税に関するルールを置く相続税法では、各財産の評価方法が明示されていません。

相続税法における財産評価は、“取得時の時価による(時価主義による)”としか定められていませんが、財産評価基本通達で、各財産の評価方法を定めています。

土地の評価

不動産の時価の評価方法は、不動産の種類によって異なります。

土地に関しては、「路線価方式」または「倍率方式」により評価を行います。
路線価方式では、土地に設定されている路線価(道路に面する土地1㎡あたりの価額)に土地面積を乗じて、さらに当該土地の状態に対応する補正を加えることで評価を行います。
※路線価は毎年国税局長が定めるもので、国税庁のWebサイトで確認が可能

路線価が設定されていない土地もあります。その場合は「倍率方式」で評価します。
倍率方式では、固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて評価を行います。
※固定資産税評価額は、都税事務所や市役所、区役所、お手元の課税明細等で確認が可能
※倍率は毎年国税局長が定めるもので、国税庁のWebサイトで確認が可能

なお、「小規模土地等の特例」の利用条件を満たすときは、評価額を最大80%減額することができます。相続税の負担を軽減する上で強力な効力を発揮する特例ですので、税理士に相談して適用条件や節税効果を確認しておくと良いと思います。

家屋の評価

建物、特に自宅として使っていた自用家屋については、固定資産税評価額をそのまま用いて評価されます。

ただし下表のように、家屋の種類や相続の状況に応じて評価方法が異なりますので要注意です。

自用家屋 固定資産税評価額による評価
貸家 自用家屋としての価額から、借家権割合・賃貸割合に対応した価額を減額して評価
配偶者居住権 原則、固定資産税評価額と「配偶者居住権の存続期間」に基づいて評価
配偶者居住権(※)の目的
となる建物
※配偶者が被相続人の建物に無償で住むことができる権利
自用家屋としての価額から、「配偶者居住権の価額」を減額して評価

※配偶者居住権の価額は、固定資産税評価額と当該権利の存続期間から算出される

その他不動産の評価

遺産に土地がある場合、当該土地に付着する権利にも着目する必要があります。
例えば「借地権」が付いた土地は、そうでない場合に比べて土地利用に制限がかかりますので、その分減額して評価を行うことが認められています。

そこで、上で紹介した路線価方式または倍率方式により算出した評価額に対し、さらに「借地権割合」を減額して評価します。
定期借地権、配偶者居住権に基づく敷地利用権に関しても同様に、減額して相続税の計算を行うことができます。

田、畑、山林を相続することもあります。
その他不動産にはさまざまな種類があり、その種類や現状に対応した評価を行う必要があります。正確な不動産評価ができなければ、必要以上に相続税の負担が増えてしまうことがありますし、本来の価額より低く見積もると追加で納税が必要となる可能性があります。

相続税に関して揉めることのないよう、相続や不動産に強い税理士に財産評価、相続税の計算を任せることをお勧めいたします。