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相続税を電子申告する方法とは? e-Taxを使った申告の手順、電子納税について紹介 - 古野孝行税理士事務所

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相続税の申告をするために紙の申告書を手書きで作成していく必要はありません。電子申告により、手軽に作成から申告までの手続を進めていくことができます。
ただ、初めて相続税の電子申告をするという方は苦労するかもしれません。電子申告の作業自体はそれほど難しい作業でもないのですが、安全にデータの送受信を行うために必要な、導入過程が少し複雑だからです。

ここで相続税の電子申告を始めるまでの手順をまとめていますので、参考にしていただければと思います。

 

相続税の電子申告はe-Taxで行う

相続税の電子申告をするためには、「e-Tax」を利用しなければいけません。
e-Taxでの電子申告については所得税の申告などでよく知られていますが、令和元年10月からは相続税の申告手続についても利用が可能です。

e-Taxとは

そもそも「e-Tax」とは、「国税電子申告・納税システム」とも呼ばれる電子申告のシステムのことです。

所得税や消費税、贈与税、酒税などの申告から法定調書の提出、届出、申請など、税に関わるさまざまな手続を、インターネットを介して行うことができるようになります。

税金の納付についても窓口に行く必要がありませんので、e-Taxを使えば、自宅や事業所にいながら税の申告や納税などをまとめて行うことができるのです。

 

相続税の電子申告の手順

e-Taxで相続税の申告をするためには、e-Taxソフトのダウンロードが必要です。そのシステム上で、申告書データを作成・送信することになります。
ただ、前提としてダウンロード先となるPCがe-Taxソフトに対応していなければなりません。また、安全性を担保するためにシステム上での本人確認もできなければいけません。そこで利用者識別番号を取得すること、申告書データに電子署名が付けられる状態にする必要があります。

相続税の電子申告ができるようになるまでのこれらの作業を、順番に説明していきます。

電子申告ができるPC環境を準備

e-Taxを利用する前に、①OS、②ブラウザの2点をチェックしましょう。e-Taxソフトに対応した環境をまずは整えます。

国税庁が示す推奨環境(国税庁が動作を確認済みの環境)は次の通りです。

 

OS ブラウザ
Microsoft Windows 10 Microsoft Edge(Chromium)
Google Chrome
Microsoft Windows 11 Microsoft Edge(Chromium)
Google Chrome

※Mac OSではe-Taxソフトを利用できない

 

なお、書類データを閲覧したり添付したりするときにはAdobeの「Acrobat Reader DC」、あるいは「PDF化ができるフリーソフトまたはAdobe社の有料ソフト」が必要です。

利用者識別番号を取得

e-Taxの利用を始めるためには、16桁の番号から構成される「利用者識別番号」を取得しておく必要があります。

この利用者識別番号を取得する方法は複数あります。以下を参考にすると良いでしょう。

 

方法 詳細
マイナンバーカードを使う ・マイナンバーカードを使ってWeb上で利用者識別番号を取得する方法。

・「マイナンバーカードの読み取りに対応したスマホ」またはPCのときは「ICカードリーダー」のいずれかを準備する。

・e-Taxのログイン画面からマイナンバーカードを読み取り、「マイナンバーカード方式の利用開始」の画面に遷移する。その後利用者識別番号の登録画面にて入力を進める。

税務署で手続を行う ・税務署に直接出向いて利用者識別番号を取得する方法。

・職員が対面で本人確認を行った上で、ID・パスワード方式の届出を作成・送信。

・運転免許証などの本人確認書類を用意する。

税理士に依頼する ・税理士に利用者識別番号の取得手続を任せる方法。

・税理士に開始届出書を代理で送信してもらう。詳細については税理士から確認。

電子証明書を取得

e-Taxを使って相続税の申告をするには、申告等データに対する電子署名が必要です。
そして電子署名を付すためには、電子証明書の取得も済ませておかなければいけません。
※電子署名により、送信された申告等データにつき、「利用者本人が作成したこと」および「改ざんされていないこと」が確認できる

ただ、マイナンバーカードを持っている場合はマイナンバーカードを使うことができます。マイナンバーカードを作ったときに3種のパスワードを作成しているはずですので、そのうちの、英数字6~16文字からなる「署名用電子証明書」のパスワードを用意します。

マイナンバーカードを持っていない方は、別途電子証明書を取得しないといけません。
それも、政府認証基盤のブリッジ認証局と相互認証をしている認証局が作成していることなど、所定の要件を満たした電子証明書でなくてはなりません。

e-Taxソフトをダウンロード

所得税などの申告ではブラウザ版を使用することもできるのですが、相続税の申告についてはソフトをPCにダウンロードする必要があります。

e-Taxのホームページから、e-Taxソフト(共通プログラム)のインストーラをダウンロード。実行しましょう。

なお、e-Taxを利用するパソコンには、次のルート証明書と中間証明書をインストールしておく必要があります。

  • 政府共用認証局(官職認証局)
  • 政府共用認証局(アプリケーション認証局2)
  • セコムパスポートfor WebSR3.0

※ルート証明書とは、証明書の発行元の正当性を示す証明書のこと。この証明書により、システムから送信されたデータや接続先のサーバー、電子納税証明書が、本当に国税庁のものかどうかを確認できる。

相続税の申告書を作成

e-Taxソフトのダウンロードができれば、税目の追加インストールを行います。
ソフトを起動し、「税目の追加インストール」の画面上にある「追加インストール」を押下。「相続税」の選択と年度へのチェック後、インストールを実行します。
※マイナンバーカード方式によらず電子証明書を取得した場合は、e-Taxソフト上で電子証明書の登録も行う

その後、相続税申告書の作成を始めます。
申告書は、相続人ごとの取得財産や債務の合計を計算する第15表など、第9表~第15表の作成を進めていきます。

e-Taxのホームページにマニュアルコーナーが設けられていますので、「20. 相続税申告書を作成する」から操作方法を確認しておくと良いでしょう。

申告データに電子署名を付して送信

相続税の申告データ等が作成できれば、自らが作成したデータであることを示すため、電子署名を行うとともに電子証明書を添付します。画面上の指示に従い操作を進め、パスワードを入力することで電子署名が完了します。
※添付する電子証明書はe-Taxに登録したものと同一でなければならない

続いて、申告データを送信します。
データ送信時にはシステム上でデータ形式やファイルサイズなどのチェックが行われ、正しく受信されたかどうかの結果が画面上に表示されます。

 

相続税の電子納税について

上述の受信結果が通知された後、しばらくして再び送信されたデータに対する審査結果が送られてきます。必須事項が入力されているかどうか、データの改ざんがないかどうか、電子証明書が有効に添付されているかどうか、等の審査がなされます。
しばらく時間をおいてe-Taxに再ログインし、メッセージボックスの中身を確認しましょう。受信した通知内容に、「納める税金」として相続税の納税額も表示されますので、続いて納税も手続も行いましょう。

申告のみならず、電子納税も可能です。その場合、税務署、金融機関に直接出向いて納付をする必要はありません。e-Tax上での簡単操作で納付する手段としては「ダイレクト納付」があります。インターネットバンキングから納付することも可能です。

電子納税以外でも、e-Taxから「クレジットカード納付」「スマホアプリ納付」などの方法で納税をすることができます。