相続税の計算方法とは? 納税額を算出する流れと税率を適用するタイミングについて
相続税は累進課税制度により10%~55%までの税率が適用されるのですが、単純に遺産の総額に税率を掛けて納税額が計算できるものではありません。
どのようにして納税額は算出されるのか、計算手順に沿って当記事で解説していきます。
相続税額を計算する方法
相続税額を計算するには、まず、被相続人の財産を調べる必要があります。また、実際の取得分に応じて各人の納税額は変わってきますし、法定相続人の数も相続税の計算に影響します。そこで相続人の調査や遺産分割協議も済ませておかないといけません。
その上で、遺産総額のうち課税対象となる価額を把握。税率や控除を適用していき、相続税額を算出していきます。
細かい流れを以下で説明していきます。
被相続人の財産を調べる
計算の大元となる被相続人の財産を把握しないと、遺産分割も相続税の計算もできません。そこで財産調査を進め、遺産の総額を明らかにしましょう。
現金や預貯金はいくらか、不動産の評価額はいくらか、その他各種財産についてその有無や価額をはっきりさせていきます。
遺産全体が把握できたら、「正味の遺産額」がいくらになるのかを調べます。
相続税の計算上、債務や葬式費用などは控除する必要がありますので、その分は遺産総額から差し引きます。
その一方で、相続時精算課税制度を利用して贈与していた分は遺産として加算しないといけません。
相続開始前3年以内に行われた贈与に関しても同様です。
以上の処理を経て、正味の遺産額が明らかになります。
相続人の調査と遺産分割協議を済ませる
相続人の調査も欠かせません。法定相続人の数に応じて基礎控除額は定まりますし、その他にも計算に影響してくる場面があります。
また、実際の取得分に応じて相続税額は定まるため、遺産分割協議も済ませておく必要があります。
※遺言書により相続分が定まることもあるため、遺言書の有無も要確認
なお相続人の調査は、「被相続人の死亡から出生までの一連の戸籍を集めること」により進めていきます。前の配偶者との間に子どもが生まれていると、想定より相続人の数が増えることになりますし、当該人物も遺産分割協議に参加させないといけません。協議のやり直しが必要になったり、トラブルに発展したりするケースもあるため、各種相続手続を進める前に相続人の存在は明らかにしておきましょう。
課税対象となる遺産の総額を調べる
遺産のすべてが課税対象になるわけではありません。そして課税遺産総額は正味の遺産額に基礎控除を適用することで算出できますので、次の計算式を使って基礎控除額を計算しておきます。
基礎控除額 = 3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
相続人の調査の結果、法定相続人が3人であることが明らかになった場合、基礎控除額は4,800万円です。
つまり、正味の遺産額が4,800万円以下の場合は、課税対象となる遺産額は0円ということになります。
この場合、相続税の納税はもちろん、相続税の申告も行う必要がありません。
逆に、基礎控除額を超える正味の遺産があるときは、次のステップに進みましょう。
税率と税額控除を適用する
課税遺産総額が明らかになっても、まだ税率は適用しません。まずは法定相続分に応じて課税遺産総額を分割しましょう。
配偶者と子ども2人の合計3人が法定相続人である場合、配偶者は1/2、子どもはそれぞれ1/4が法定相続分に対応する取得割合となります。
その割合で分割したときの金額を、下表に照らし合わせ、適用すべき税率と控除額を把握します。分割した金額が1,000万円以下になるときは税率10%。3,000万円を超えて5,000万円以下になるときは税率20%を乗じて、その後200万円を控除できます。
法定相続分に対応する取得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
~1,000万円 | 10% | - |
~3,000万円 | 15% | 50万円 |
~5,000万円 | 20% | 200万円 |
~1億円 | 30% | 700万円 |
~2億円 | 40% | 1,700万円 |
~3億円 | 45% | 2,700万円 |
~6億円 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
実際の取得割合に対応する納税額を算出
税率と控除を適用した後の各々の相続税を合計し、「相続税の総額」を算出します。その上で、次は実際の取得割合に対応してこの相続税の総額を分割します。
例えば、配偶者と子ども2人がいるときの法定相続分は上に挙げた通りですが、遺産分割協議で取得割合を「配偶者2/3」「子どもはそれぞれ1/6」と調整することも可能です。この場合において相続税の総額が600万円であるなら、「配偶者400万円」「子どもはそれぞれ100万円」が納税額となります。
ただ、その税額に対して税額控除が適用できるケースもあります。
配偶者であれば配偶者控除が、子どもが18歳未満である場合は未成年者控除が適用でき、その分税負担は小さくなります。
相続税の計算例
以上で説明した流れに沿って、相続税の計算をしてみます。
〈相続税の計算例〉
- 「被相続人の財産を調べる」
- 正味の遺産額:1億2,000万円
- 「相続人の調査と遺産分割協議を済ませる」
- 法定相続人:3人
- 配偶者の取得分:6,000万円
- 長男の取得分 :4,000万円
- 長女の取得分 :2,000万円
- 「課税対象となる遺産の総額を調べる」
- 基礎控除額:4,800万円
- 課税遺産総額:1億2,000万円-4,800万円=7,200万円
- 「税率と税額控除を適用する」
- 配偶者:3,600万円×20%-200万円=520万円
- 長男 :1,800万円×15%-50万円=220万円
- 長女 :1,800万円×15%-50万円=220万円
- 相続税の総額:520万円+220万円+220万円=960万円
- 「実際の取得割合に対応する納税額を算出」
- 配偶者:960万円×1/2=480万円
- 長男 :960万円×1/3=320万円
- 長女 :960万円×1/6=160万円
なお、配偶者に関しては配偶者控除により納税額は0円となります。
※配偶者控除の適用により、「1億6,000万円」「法定相続分相当額」のいずれか大きい金額まで相続税はかからなくなる
また、長男長女についても18歳未満であれば、満18歳になるまでの年数1年につき10万円の控除が適用できます。
相続税の計算は税理士にご相談ください
ここで紹介した相続税の計算は、かなり単純化した例です。実際にはより複雑な処理が必要になるでしょう。
計算ミスや申告遅れなどがあるとペナルティとして本来の納税額より大きな税負担を負わされてしまいますし、相続税の計算や申告作業については税理士に依頼して対応するのが一般的です。
資格者紹介Staff
税理士古野孝行
一般家庭から億を超える相続まで、広く対応が可能です。複雑な相続や、難しい土地の評価なども、安心してお任せください。
当事務所の税理士は、独立前から一貫して相続案件に注力しており、一般家庭から20億円規模の相続まで、累計で120件超の対応実績があります。専門性の高さと土地の評価には特に自信があり、その実力は他の専門家から相談を受けるほどです。若手税理士ですので、相続対策や相続発生時のみならず、その次の代までサポートできるのも強みの一つです。お困りの際はお気軽にご相談ください。
- 相続税申告
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税理士(東京税理士会 登録番号111177) 宅地建物取引士 日本商工会議所主催 簿記検定1級 財務金融アドバイザー (登録番号tky111177000) |
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