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相続税における基礎控除額はいくら?計算方法、法定相続人の数え方などを解説 - 古野孝行税理士事務所

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遺産相続は誰にでも起こり得るものですが、相続に伴う相続税申告は常に起こるものではありません。むしろこの申告手続をしなければならない人の割合の方が少ないのが現状です。

こうした現状には相続税の「基礎控除」が大きく関わっています。以下で基礎控除額やその計算方法について解説します。

 

課税価格が基礎控除額を超えると相続税の申告が必要

相続税の計算は簡単ではありません。まず、被相続人から相続などにより取得した財産の相続税評価額を計算しなければなりません。そして財産を取得した人ごとに相続した財産の価額から債務・葬式費用を差し引き「課税価格」を計算し、それを合計します。

こうして得られる「課税価格の合計額」から基礎控除額を引くことで「課税遺産総額」が算出されます。その後さらに、法定相続分で按分するなどいろいろな処理を行い、各人の納税額が決定されるのです。

 

逆に、課税価格の合計額が基礎控除額を超えなかったときには、一定の場合を除きその後の計算を行うまでもなく、相続税の申告、納税を行う必要はなくなるということです。

こうした関係性から、相続税における基礎控除額は、「相続税の課税最低限度額」と表現されることもあります。

 

遺産に係る基礎控除額はいくらか

基礎控除(厳密には「遺産に係る基礎控除」)に関する基本的なルールは、相続税法第15条第1項に定められています。

 

第十五条 相続税の総額を計算する場合においては、同一の被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した全ての者に係る相続税の課税価格(第十九条の規定の適用がある場合には、同条の規定により相続税の課税価格とみなされた金額。次条から第十八条まで及び第十九条の二において同じ。)の合計額から、三千万円と六百万円に当該被相続人の相続人の数を乗じて算出した金額との合計額(以下「遺産に係る基礎控除額」という。)を控除する。

引用:e-Gov法令検索 相続税法第15条第1項(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=325AC0000000073

 

この内容を計算式に置き換えると基礎控除額は以下のようになります。

 

基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

 

つまり、法定相続人が1人だとしても3,600万円を超えなければ相続税について考える必要はないということです。

その他いくつかのパターンで「基礎控除額がいくらまで認められるのか」を下表に示します。

 

法定相続人の数 基礎控除額(=課税最低限度額)
1人 3,600万円
2人 4,200万円
3人 4,800万円
4人 5,400万円
5人 6,000万円

 

法定相続人が増えれば増えるほど課税のハードルが上がっていくことが見て取れます。

 

「法定相続人」のカウント方法

基礎控除額の計算では法定相続人の数がポイントとなります。

しかし、その数え方には要注意です。特に「相続放棄をした人がいる」「養子がいる」というケースには留意しましょう。

 

例えば法定相続人が3人いる場合において、1人が放棄をしたとしましょう。この場合、遺産分割は残りの2人で行うことになりますが、相続税の基礎控除の計算においては、放棄がなかったものとして3人で計算します。

そのため放棄をした者がいるからといって、他の人が得られる基礎控除の恩恵が小さくなるわけではありません。

 

次に、被相続人が養子縁組をしており、実子が3人、養子が2人いたとしましょう。このとき、基礎控除の計算においては、相続人の数を5人とカウントすることはできません。

「実子がいるときには、養子の数は1人までしかカウントできない」と定められているからです。節税を目的とした養子縁組の濫用を防ぐためです。したがって、この場合の相続人の数は4人となり、基礎控除額は5,400万円となります。

他方、実子がいないときは養子の数を2人までカウントすることができます。

 

基礎控除額は法改正により変動することがある

基礎控除額は変わることがあると認識しておきましょう。実際、これまでも法改正により何度か変動を繰り返してきています。

 

昭和62年までは「2,000万円+400万円×法定相続人の数」

昭和63年からは「4,000万円+800万円×法定相続人の数」

平成4年からは「4,800万円+950万円×法定相続人の数」

平成6年からは「5,000万円+1,000万円×法定相続人の数」

そして平成27年からは現在の金額に設定されています。

 

昭和63年以降は現在よりも大きな金額で設定されていたこと、そして平成27年の改正以降大幅に金額が下げられていることがわかります。

 

こうした変動は、社会情勢の動きに沿って起こるものです。過去の大きく設定されていた基礎控除額に関しては、バブルの時代に土地価格が上昇したという背景があります。そのため現代と比べて単純に税負担が小さかったと言えるわけではありません。

その後バブル期に比べて土地の価格が下がってきたことに伴い見直しがなされ、控除額も下がるに至ったのです。

 

ただ、平成27年における改正前後の落差は大きく、平成25年時点では課税される相続の割合は4%に過ぎなかったものが令和元年には8%ほどに上昇しています。いずれにしろ全体から見れば小さな割合ですが、法改正により大きな変化が生じたことがこの数値からもわかります。

 

このように、今後基礎控除額に関する法改正がなされる可能性はゼロではありません。現在の計算式が絶対的なものであると捉えず、最新の情報を見ていくことが大切です。

相続税では基礎控除以外にも多くの控除制度がありますので、最新の税制を把握し続けるのは労力が必要となります。

有効に対策を図るためにも税理士へ相談することをおすすめします。