相続税の節税対策と納税資金対策! 生前に被相続人がやっておきたいこと
亡くなった方の財産は、相続財産として相続人等に承継され、相続税が課税されます。
これは日本の法律で定められているルールであるため避けることはできませんが、事前に工夫することで納税額を下げられることもあります。
この節税対策に加え、納税資金の準備もしておくことで、相続人の負担は大きく軽減されます。
そこで当記事では、将来被相続人となる方が事前にしておきたい「節税対策」と「納税資金対策」について解説をしていきます。
納税額を下げるための「節税対策」
節税対策にもさまざまな手法がありますが、事前にできる対策の代表的なものとして「生前贈与」「生命保険」「不動産活用」が挙げられます。
それぞれ詳細を説明していきます。
生前贈与の非課税枠を活用する
相続対象となる遺産が少ないほど相続税の課税対象も少なくなり、結果的に納税額も小さくなります。
そして遺産を減らす方法として「生前贈与」があります。
ただ、贈与に対しては贈与税が課税されますので、相続税のみならず贈与税についても考慮し、両者のバランスを上手く取ることが大事になってきます。
贈与税の課税は、原則として暦年課税制度に基づいています。 暦年課税制度では基礎控除として110万円を適用することができますので、1年あたり110万円以内の贈与であれば非課税で財産を移転できることになります。 ※相続開始前3年以内にあった贈与は相続税の対象になるため要注意
また、基礎控除以外の控除や特例などもあります。
各制度の非課税枠を活用することで、贈与税の課税を避けつつ遺産を減らし、相続税の納税額を下げるということも可能になります。
そこで、次の制度が利用できないか検討すると良いでしょう。
住宅取得等資金の贈与 | 直系尊属(両親や祖父母など)が、18歳以上の子どもや孫に住宅資金を贈与するとき、一定額まで非課税にできる制度。 〈非課税枠〉 ・省エネ等住宅:1,500万円 ・その他の住宅:1,000万円 |
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配偶者控除 | 婚姻期間20年以上の配偶者に対し、居住用不動産やその購入資金を贈与するとき、基礎控除に加えて2,000万円の控除額を適用できる制度。 |
結婚・子育て資金の 一括贈与 | 直系尊属が、18歳~50歳の子どもや孫に対し、結婚費用や妊娠、出産、育児費用を贈与するとき、一定額まで非課税にできる制度。 〈非課税枠〉 ・1,000万円 ※結婚費用については上限300万円。 |
教育資金の一括贈与 | 直系尊属が、30歳未満の子どもや孫に対し、教育資金を贈与するとき、一定額まで非課税にできる制度。 〈非課税枠〉 ・1,500万円 ※学校以外に支払われる場合は500万円。 |
生命保険の非課税枠を活用する
生命保険の契約を締結した場合、生前に保険料を納め、死後に受取人が保険金を受け取ることができます。
一定の場合、生命保険金はみなし相続財産として相続税の課税対象になってしまうのですが、非課税枠が設けられていますので上手く活用することで節税対策になります。
生命保険金の非課税枠は、「500万円×法定相続人の数」で計算することができます。
つまり、配偶者と子ども2人が相続人になる場合、1,500万円が非課税枠となり、その分節税効果が得られることになるのです。
不動産の相続税評価額を下げる
金額ベースで見ると、相続財産のうち大きな割合を占めているのは不動産です(特に土地)。
そのため不動産の相続税評価額を下げることが節税効果に大きな影響を及ぼします。とはいえ、不動産の価値をただ下げたのでは、資産を捨てたのと変わりありません。実質的な価値は残しつつ、相続税の計算上において評価額を下げる工夫が必要です。
例えば更地を所有している場合、立地次第ではとても大きな相続税評価額で見積もられる可能性があります。そこで更地上に賃貸物件を建築し、これを賃貸に出すというやり方も候補として考えられます。賃貸に出すことで評価額は下がり、また、賃貸物件を建築するときの借入額を債務として控除することができます。その反面、上手く借り手が見つかれば家賃収入も得ることが可能です。
また、「小規模宅地等の特例」という、土地の相続税評価額を最大80%減額できる特例もあります。
とても節税効果の大きな特例ですが、所定の要件を満たさなければなりません。
そこで将来同特例を利用することも視野に入れ、可能なら要件を満たせるように、同居人のことなど調整をしておくと良いでしょう。
相続税を納めるための「納税資金対策」
節税対策も無限にできるわけではありません。大きな資産を持っている場合、納税額を0円にまで下げるのは困難でしょう。
そこで次に考えるべきは「納税資金の準備」です。
納付すべき金額が、相続や遺贈により取得した財産の価額を超えることはありません。
しかしながら、取得した財産のすべてが換金できるとは限らず、自前の現金や預貯金などを使わないといけなくなるケースもあります。
相続税は現金で一括納付するのが原則であり、物納の要件も厳しいため、事前に納税資金を用意しておくことが望ましいです。
そこで以下で紹介する対策を検討しましょう。
不動産や貴金属の売却
預貯金や生命保険、投資信託、上場株式などはすぐに換金ができるタイプの財産です。 これに対し、不動産や貴金属はすぐの換金ができません。
買い手が見つかるまで待つ必要がありますし、急ぐと希望の条件で売却できない可能性が高まります。
そこで納税資金対策として、被相続人となる方が事前に不動産や貴金属を売却して、金融資産の割合を増やしておくことも検討しましょう。
残しておきたい不動産などはそのままに、売却しても構わない財産については計画的に売却を進め、現金を確保しておくと良いでしょう。
生命保険の活用
納税資金対策としても生命保険は活用できます。
契約者・被保険者を被相続人、保険金受取人を相続人と設定すれば、相続開始後に保険金が支払われ、その金額を納税資金に充てることができます。
上述の通り保険金は法定相続人の数に対応する一定額まで非課税となりますので、その分はまるまる納税資金として活用が可能です。
収益性ある財産の生前贈与
配当金や賃料が得られる、収益性のある財産を生前贈与することも納税資金対策として有効です。
土地に賃貸物件を建築して賃貸に出している場合、土地の評価額を下げることはできます。
しかし賃貸に出している期間が長いと、借入金の残債務は小さくなる一方で賃貸収入は入り続け、相続財産が全体として増えることもあります。
そこで収益性ある財産をあらかじめ贈与しておき、そこから得られる収入は相続人に取得させておけば、納税資金を蓄えさせることができます。
贈与に対する課税や受贈者の収入が増えることに対する課税なども配慮しないといけませんが、相続後突如大きな税負担を負うリスクを避けやすくなります。
贈与税や二次相続にも注意して対策を取ることが大事
相続税の節税対策・納税資金対策を進めるにあたっては、相続税のみならず他の税金のことにも注意しないといけません。
相続税の課税が避けられてもそれ以上の贈与税がかかってしまっては効果的といえません。
また、二次相続への配慮も重要です。例えば配偶者が相続人となる場合、大きな財産を配偶者が取得しても配偶者控除によって税負担は大きく下げることができます。しかしその配偶者に関してさらに相続(二次相続)が起こったとき、配偶者が所有していた財産を子どもが相続することになります。
配偶者控除を頼りに、一次相続で財産の大半を配偶者に相続させていると、二次相続における負担が増えてしまうことがあるのです。
そのため二次相続にも注意して、全体としての税負担が軽減されるように工夫することが大事です。
状況によって最適な対策は異なります。
そのため税理士に相談して、現状に適した節税対策・納税資金対策のアドバイスをもらった上で取り組みを始めると良いでしょう。
資格者紹介Staff
税理士古野孝行
一般家庭から億を超える相続まで、広く対応が可能です。複雑な相続や、難しい土地の評価なども、安心してお任せください。
当事務所の税理士は、独立前から一貫して相続案件に注力しており、一般家庭から20億円規模の相続まで、累計で120件超の対応実績があります。専門性の高さと土地の評価には特に自信があり、その実力は他の専門家から相談を受けるほどです。若手税理士ですので、相続対策や相続発生時のみならず、その次の代までサポートできるのも強みの一つです。お困りの際はお気軽にご相談ください。
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保有資格 |
税理士(東京税理士会 登録番号111177) 宅地建物取引士 日本商工会議所主催 簿記検定1級 財務金融アドバイザー (登録番号tky111177000) |
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