不動産相続でトラブルを防ぐポイントとは? よくあるトラブルと事前対策の方法について
相続に伴い、家族や親族間でトラブルが発生することがあります。特に土地や建物などの不動産が遺産として残るときは要注意です。
他の財産に比べて価格が大きいですし、簡単に分割できるものでもありません。名義変更の手続も必要となるなど、取り扱いが比較的複雑です。
そこで、この記事では不動産相続におけるトラブルの内容を取り上げ、特に被相続人となる方が事前に押さえておきたい「トラブルを防ぐためのポイント」を解説します。
不動産相続でよくあるトラブル
遺産に不動産があるときによく起こるトラブルを下表にまとめます。
よくあるトラブル | 詳細 |
---|---|
不動産の取り合いで争いになる | ・誰が土地や家屋を取得するのか、不動産をめぐって相続人間で対立が起こり、意見がまとまらなくなることがある ・特に、相続財産の調査をした結果、想定より大きな価値を持つ物件であることが明らかになるとトラブルが起こりやすい |
相続分が不平等になる | ・現金のように平等に分けることが難しいため、不動産を取得した人に有利な遺産分割となってしまいやすい ・不動産以外に財産があまり残っていないときや、特に価値が大きく遺産総額の大半を不動産が占めているときにトラブルが起こりやすい |
被相続人以外の人物が名義人になっている | ・実質的な所有者は被相続人であるものの、名義変更をしないまま放置されていることがある ・正しい所有者に名義を移す手続には手間と時間がかかり、場合によっては第三者との争いが生じるおそれもある |
空き家になってしまう | ・相続した不動産に誰も住む予定がない場合、空き家のまま放置されてしまうことがある ・空き家のまま放置されると老朽化が加速し、不動産としての価値を落としてしまう |
共有することで処分ができなくなる | ・平等な相続にしようと不動産を共有することで、各自自由な処分ができなくなり、その後の運用に困ってしまうことがある |
税負担に困ってしまう | ・価値の大きな不動産を取得することで大きな相続税がかかることがある ・不動産のみを取得したとき、相続人自身の預金を崩して多額の納税が必要になる場合がある |
このように、さまざまなトラブルが不動産の相続で起こり得ます。
不動産相続のトラブルを防ぐポイント
上に挙げたようなさまざまなトラブルを防ぐためには、被相続人が事前に対策を講じておくことがとても大事です。
次のポイントを押さえて、一つひとつを検討していきましょう。
- 本人と家族とで話し合っておく
- 遺言書を作成する
- 家族信託を始める
- 不動産を売却する
- 登記を確認しておく
- 現金を確保しておく
本人と家族とで話し合っておく
「誰が不動産を取得するのか」ということが争点となり、家族や親族の関係性が悪化してしまう可能性があります。
これは、各々自分が取得できることを期待するからこそ起こる問題であり、事前によく話し合っておくことで解決できることもあります。
その時点では被相続人となる本人の所有物ですし、その処分方法は本人が自由に決められます。そのため場合によっては生前贈与により相続人の一部に与えておくという方法も検討すると良いでしょう。 ただ、家族の一部が大きな財産を得たという事実が相続開始後にトラブルを生む可能性があります。
そのため贈与の効力を生じさせるのに必要ではありませんが、家族ともよく話し合っておき、生前贈与をするに対して納得を得ておくことが大事です。 生前贈与をせず相続人に取得させるときでも、分割方法などを事前に話し合っておくと、相続人間の不平等なども防ぎやすくなります。
例えば「代償分割」や「換価分割」などの方法で不動産を遺産分割することができるのですが、事前に話し合っておけば相続開始後スムーズに手続を進められるようになります。
遺言書を作成する
相続人間での話し合いがまとまらない可能性があるなら、遺言書で被相続人となる方が指定しておくのも検討しましょう。
遺言書で、誰がどの財産を取得するのかを指定しておくことで、相続人が話し合う必要がなくなります。ただしこの場合、法令に準拠した形で作成されなければ無効になってしまいます。税理士、司法書士、行政書士や弁護士などに相談して、適正に作成しましょう。また、遺留分にも注意が必要です。配偶者や子ども、親には、遺留分として遺産の一定割合を確保する権利があります。
一部の者にすべての財産を与えたとしても、後から遺留分の請求によりトラブルに発展する可能性があります。
家族信託を始める
生きているうちに信託契約を交わし、不動産を信託財産として組み入れ、当該物件を相続財産の対象から外すというやり方もあります。
不動産運用に明るい人物を受託者として定め、元所有者となる委託者が亡くなってからも所定のルールに従って運用を続けてもらうよう契約で定めるのです。 例えば不動産が賃貸アパートなどの場合、不動産事業の知識を何ら持たない人物が相続をしても上手く扱えません。
不動産に詳しい人物に運用を任せ、そこから発生する賃貸収入を与えるようにした方が全体としての利益を維持できます。
ただし信託は仕組みが複雑ですので、専門家に相談して検討しましょう。
不動産を売却する
不動産をめぐって争いが起こりそうなら、事前に売却することも検討してみましょう。売却をすることで現金に形が代わり、遺産分割が容易になります。また、不平等が起こりにくくなり、手続も簡単になります。ただし、不動産相続だと利用できる税制上の特例などが使えなくなり、相続税の負担が増してしまう可能性が高いです。税負担とのバランスも考慮して、相続前に売却するべきかどうか検討することが大事です。
登記を確認しておく
事前に登記を確認し、名義人を変更する手続を進めておきましょう。相続人には遺産分割協議の他、しなければならない手続がたくさん発生します。
名義人が被相続人以外であることが発覚すると、たくさんの方に署名押印をしてもらわなければならなくなるなど、大きな手間が生まれる可能性があります。 そのためあらかじめ登記の内容を確認しておき、問題が見つかったときにはその時点で処理しておくようにしましょう。
現金を確保しておく
相続税は、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に、現金で納税しないといけません。不動産を相続することで大きな納税額が生まれた場合、価値の大きな財産を手に入れたとはいえ、現金が増えるわけではありません。相続人の手元にある現金で対応しなければならず、生活などに困ってしまうリスクがあります。 場合によっては、結局不動産を売却するしかなくなるかもしれません。
そのため税負担にも耐えられるよう、現金もある程度確保しておくなどの対応を検討しましょう。
資格者紹介Staff
税理士古野孝行
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当事務所の税理士は、独立前から一貫して相続案件に注力しており、一般家庭から20億円規模の相続まで、累計で120件超の対応実績があります。専門性の高さと土地の評価には特に自信があり、その実力は他の専門家から相談を受けるほどです。若手税理士ですので、相続対策や相続発生時のみならず、その次の代までサポートできるのも強みの一つです。お困りの際はお気軽にご相談ください。
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